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ありもしないことを、さも「体験しました」と言わんばかりに饒舌に妄言を書き連ねていくのは何とも言えない楽しさがある。その妄想の中では、自分はヒーローにでも絶世の美女にでもなれる。そのような妄想の繰り返しで一日が、一週間が、一ヶ月が、一年が終わることも多々ある。全く馬鹿馬鹿しいことだということは、とっくのとうに分かりきっているのだが、やめられない。それが人間なのだろう。
ここでは、その妄想をただひたすらに垂れ流していく。まるで「これは僕が体験した物語です」と言うような、そんなリアリティに溢れる妄想喜劇である。
日本橋氏が東京の日本橋(にほんばし)、及び大阪の日本橋(にっぽんばし)に足を運んだのは、今からもう何年も前のことになる。こんなハンドルネームを使用しているのだから、東西二つの日本橋に足を訪れなければ許されないような気がして、ムズムズしていた。
そしてムズムズしながら飛行機に乗り、ムズムズしながら北海道を旅立った。ムズムズしたまま機内食を頬張り、ムズムズしながら東京に着いた。
飛行機を降りてからは「日本橋に行ける」という期待からくる高揚感と興奮に、またムズムズした。ムズムズしながらタクシーを捕まえ、日本橋まで行ってくれと伝える。タクシーの運転手はこう思っただろうと、日本橋氏はいう。「僕の凛々しい表情に見とれて呆けた顔をしていた」と。しかし、それは氏の一方的で迷惑極まりない勘違いであった。やがて運転手は呆れ果てた顔をしてそそくさとアクセルを踏み込んだ。いざ日本橋へ。
日本橋に着いた。タクシーを降りるとそこには橋がかかっていて、それはそれは立派な橋だった。これが日本橋か。日本橋氏はおもむろに日本橋にて横たわり、地面にキスをした。嗚呼!これが日本橋の味!興奮は最高潮だ。周囲の視線が熱い。氏の顔が美しいからと言って、そんなにまじまじと見つめられては、いくら氏でも照れるしかない。女子大生風の女の子が氏の方を見て微笑んでいる。きっと彼女は日本橋という一人の男性に恋をしたのだ。日本橋氏は「むふふ」と奇怪な笑みを浮かべた。そこには女の子と手を繋いで、我が故郷北海道は札幌市の大通公園を闊歩する氏の姿があったからだ。氏は女子大生風の女の子の方へと向き直し、ウィンクをした。どこかで携帯電話に付いているカメラのシャッター音が聞こえた。
ホテルに着いた。日本橋での氏の奇行っぷりは存分に伝わったであろう。本人は至って真面目に生活をして、呼吸をして、自らの足で歩いているだけなのだ。氏はこの日一日を振り返って、こうつぶやいた。
「まだだ、まだ暴れ足りない」
きっと日本橋氏は脳味噌が足りていないのだろう、と氏に詳しい専門家の先生はいう。それは筆者も同意見であり、また、氏も異論を唱えなかった。日本橋という男は、大変阿呆なのだ。
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