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日本橋氏、妄想ヘンテコエッセイを書く 第参回

 見切り発車で始まった当ヘンテコエッセイもどきも、そろそろ筆者のやる気により終わりに近づきたいという思いが出てきた。しかして、終わることは許されていない。なぜなら、同級生の女の子に「あなた、またヘンテコで妙ちきりんな文章を書いてるのね」と言われたからだ。これは許しがたい発言だ。私がいつ妙ちきりんな文章を書いたと言うのだ。ヘンテコであることは否定しがたい事実であるゆえに言及はしないが、妙ちきりんだとは思ったことはない。困ったものだ。

 その女の子の名前は「百年さん」という。飄々とした態度で、毅然に振る舞い、成績優秀、スポーツ万能、眉目秀麗、才色兼備、魑魅魍魎、悪鬼羅刹、すべてを兼ね備えた非の打ち所のない完璧超人である。彼女はいつも私に対しての冷徹さを忘れず、某お笑い芸人さながらの毒舌っぷりで、私のドM精神を刺激した。
 刺激された当の私は、興奮を覚え、静かに快楽に身を委ね、百年さんに馴れ馴れしく接していた。百年さんは私のその態度が気に入らなかったのか、どこからか取り出したシャープペンシルで、私の腕をちくりと刺した。

 百年さんのご自宅にお邪魔したことがある。どういった経緯でお邪魔になったのかは分からないが、その時にやけに柔らかいクッキーを差し出され、もぐもぐと咀嚼して他愛もない話をしていたのを記憶している。百年さんは自宅ではおとなしいようだ。なんだか新鮮だったので、それを茶化すと、再びどこからか取り出したシャープペンシル(0.3芯)で私の腕をちくりと刺した。私は涙を流した。
「あなた、いつもヘンテコな文章書いたり、下手くそな絵を描いたりしてるけど、楽しい?」
 百年さんは人の気にしてることに対してズカズカと土足で蹂躙するのを得意としていた。迷惑極まりない女だ。
「そうだね、楽しいかと訊かれれば楽しいけど、やらなくたって支障はないね」
「じゃあやめてしまえばいいじゃない」
「そうはいけない。趣味は大事にするべきだ」
 私はさもいい事を言ったかのように得意げな笑みを浮かべてた。百年さんは「まぁ、そうね」と言い、柔らかいしっとりクッキー(チョコ味)をもぐもぐしていた。
「百年さんは、何か趣味はないの?」
「うーん、そうねぇ。 あ、お菓子作りは割りと好きよ」
「お菓子作り?百年さんが?」
 私は小馬鹿にするような嘲笑した顔で百年さんを見つめた。百年さんは私の頬をつねり、「似合わなくて悪かったわね」と言った。私は涙を流しながらやけに柔らかいクッキー(塩バニラ味)をもぐもぐした。
 そうして二人でもぐもぐしているとあっという間に時間は経つもので、お暇することにした。
 帰り道、さり気なく百年さんが「また来てね」と言ったのを私は耳ざとく聞いていた。

 その夜、私はひとしきり猥褻妄想に耽り、ひとりよがりのリンボーダンスで一夜を明かした。

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